熱はないけど咳が止まらない時に考えられる疾患とは?
「熱はないけど、咳が止まらなくて苦しい」
このような症状で困った経験はありませんか?
咳は、呼吸器の疾患で比較的よく見られる症状です。
咳は身体の防御反応ですが、なかなか止まらず長引くと非常につらく苦しい症状ですよね。
今回の記事では、咳が出て止まらない場合に考えられる4つの疾患について詳しく解説します。
咳が止まらずお困りの方は、ぜひ最後までお読みください。
1.咳が出る疾患は?
咳が出る呼吸器の疾患には、以下のような病気があります。
・慢性気管支炎
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・喘息
・肺がん
風邪やインフルエンザなどの感染症でも咳は出ます。
しかし、咳が出ても徐々に落ち着く場合がほとんどです。
この4つの疾患は、感染症とは異なり、咳の症状が長引きます。
どのような疾患なのか、詳しく解説します。
1-1.慢性気管支炎
慢性気管支炎とは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のひとつとされており、気管支の粘膜に慢性的に炎症が起こっている状態です。
慢性気管支炎の原因は、主に喫煙だといわれています。
喫煙以外には、大気汚染も原因のひとつです。
慢性気管支炎の主な症状は、以下のとおりです。
・慢性的な咳
・粘り気のある痰
・労作時の息切れ
・喘鳴
原因不明の咳や痰が、1年のうち少なくとも3か月以上続き、さらにその状態が連続して2年以上続く場合、慢性気管支炎を疑います。
慢性気管支炎の治療の基本は、「禁煙」と「薬物療法」です。
禁煙をすると、早ければ1ヵ月で咳や喘鳴などの症状が改善すると言われています。
慢性気管支炎の改善だけでなく、免疫機能の回復や肺がんなどのリスク低下など、様々な病気にかかるリスクが低くなります。
禁煙で遅すぎるということはありません。特に慢性的な咳で悩んでいる方は早期に禁煙に取り組みましょう。
また、自分で禁煙をし続ける自信がないという方は、一度禁煙外来を受診してみるのもおすすめです。
【参考情報】e-ヘルスネット『禁煙の効果』
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-08-001.html
【参考情報】Cleveland Clinic “Chronic Bronchitis”
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24645-chronic-bronchitis
1-2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、「肺気腫」と「慢性気管支炎」を総称した呼び方です。
喫煙によりタバコに含まれる有害物質を長期間吸い込み続けた結果、気管支や肺胞に障害が起こる病気です。
「たばこ病」と呼ばれるほど、喫煙習慣や受動喫煙が大きな原因となっています。
その他、粉塵や大気汚染もCOPDの原因です。
COPDでは、以下のような症状があらわれます。
・慢性的な咳
・粘り気のある痰
・労作時の呼吸困難
喘鳴や発作性の呼吸困難を起こす場合もあります。
喘息と症状が似ていますが、COPDは進行性の病気です。
進行すると、低酸素血症を起こし、在宅酸素療法や補助換気療法が必要です。
いったん低下した肺の機能は回復させることができません。
しかし、「禁煙」と「薬物療法」で適切な治療を継続すれば、病状の進行を遅らせることができます。
呼吸機能が低下しているCOPD患者にとって、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかると、咳や痰が増え、息苦しい状態になります。
そのため、感染症が流行している時期は、手洗いやうがい、マスクの着用、予防接種など、感染予防をおこないましょう。
【低酸素血症・・・血液中の酸素が不足した状態】
【補助換気療法・・・呼吸が難しい患者をサポートするため人工呼吸器や換気マスクを使用する治療法】
【参考情報】『COPD (慢性閉塞性肺疾患)』東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/copd/
1-3.喘息
喘息とは、アレルギーが原因で気道に慢性的な炎症がある状態です。
少しのきっかけで気道が過敏に反応し、発作的に咳が止まらなくなります。
喘息を引き起こすアレルギーは、ハウスダストやペットのフケ、花粉、ダニ、カビなどさまざまです。
以下は、喘息の特徴的な症状です。
・夜間や早朝に咳が止まらなくなる
・ヒューヒュー、ゼーゼーなどの喘鳴が聞かれる
・運動やアレルゲンの吸入が刺激となり息苦しさを感じる
・呼吸困難を伴う喘息発作
喘息は、発作を繰り返すことで、気道の状態が悪化します。
そのため、発作を繰り返さないために、喘息の治療は以下の3つが基本となります。
・発作を起こす要因を減らす
・気道の炎症を抑える
・発作が起こりにくい体力作り
発作のきっかけとなる、アレルゲンの吸入や冷たい空気、激しい運動などは避けましょう。
症状がない状態でも気道の炎症は続いています。
症状が落ち着いていても、吸入薬はしっかり継続しましょう。
また、体力作りも大切です。
発作が起きない適度な運動、規則正しい生活、栄養のある食事など、日常の中で強い体作りを心掛けましょう。
【参考情報】『気管支ぜんそく』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/c/c-01.html
1-4.肺がん
肺がんとは、肺に発生した悪性腫瘍を指します。
肺がんの主な症状は、以下の通りです。
・咳
・痰や血痰
・胸の痛み
・息苦しさ
・動悸
病状が進行してから症状があらわれ病気に気づくケースもあり、初期の肺がんは自覚症状がありません。
肺がんを起こす最大の原因は、「喫煙」です。
喫煙する人は、喫煙しない人に比べて、男女ともに4倍以上肺がん発生率が高いといわれています。
喫煙している本人だけでなく、周囲でタバコの煙(副流煙)を吸う「受動喫煙」でも肺がんのリスクは高まります。
喫煙以外には、大気汚染やアスベストを吸入する環境に長期間いた人は、肺がんのリスクが高いといえるでしょう。
肺がんは、がんができる部位や性質により、4つの種類に分類されています。
・腺がん
・扁平上皮がん
・大細胞がん
・小細胞がん
肺がんの種類により特徴が異なるため、治療方法もがんの種類や進行状況に合わせて選択が必要です。
肺がんの治療は、主に以下のような選択肢があります。
・手術療法
・放射線療法
・薬物療法
・緩和ケア
肺がんの状態によって、いくつかの治療法を組み合わせておこないます。
【参考情報】『肺がんについて』がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html
◆『咳が止まらない場合に考えられる病気と検査・治療・予防について』>>
2.おわりに
風邪やインフルエンザなどの感染症では、咳のほかに発熱も見られます。
しかし、熱がないのに咳が止まらず長引く場合、呼吸器の感染症である可能性は低く、他の病気が考えられます。
2週間以上咳が続く場合は、要注意です。
今回解説した4つの呼吸器疾患は、早めの治療が大切です。
熱がないのに咳が止まらない場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。