マイコプラズマ肺炎の症状や検査、治療、予防について
この記事では、マイコプラズマ肺炎の症状、検査方法、治療、予防策についてご紹介します。
マイコプラズマ肺炎は比較的軽度の肺炎で、主に子供や若年層に発症することが多い疾患ですが、大人にも見られます。
感染が疑われる場合、感染対策を徹底することが重要です。再感染の可能性もあるので、一度感染しても注意が必要といえます。
とくに咳が2週間以上続く場合は、早めに呼吸器内科の受診を検討しましょう。
1.症状・特徴
マイコプラズマ肺炎は進行がゆっくりで、症状が比較的軽いことが特徴です。
断続的に発熱のある場合が一般的で、熱が上がったり下がったりします。
また、乾いた咳が続き、これに加えて頭痛や倦怠感、喉の痛みを感じることがあります。
症状が緩やかに進行するので、通称「ウォーキングニューモニア」とも呼ばれることがあります。
日常生活に支障をきたさず歩いて通院できる程度の軽さであることが多いです。
潜伏期間は2〜3週間と長く、感染してもすぐには症状が現れないこともあります。
免疫力が高い方ほど症状が重くなる傾向があります。主に子どもや若年層に多く見られます。
一方で、どの年齢層にも発症する可能性があり、健康な大人でも注意が必要です。
季節を問わず発症しますが、冬に発症する場合が多い傾向にあります。
多くの場合は軽症で済みますが、症状が長引く場合や悪化することもあります。
そのため、症状が2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
【参考情報】Centers for Disease Control and Prevention『Mycoplasma pneumoniae Infection』
https://www.cdc.gov/mycoplasma/about/index.html
2.検査
マイコプラズマ肺炎の診断で使われる検査についてご紹介します。
2-1.画像検査
マイコプラズマ肺炎の画像診断には、胸部X線検査が広く使われます。
ただし、初期段階ではX線の写真上に明確な異常が見られないことも多いです。進行するにつれて、両側肺に斑状陰影*が現れ始めます。
重症例では、より広範囲に浸潤影*が見られる場合もあります。
CT検査を行うと、間質性陰影や小葉中心性の陰影が確認できることもありますが、画像所見だけではマイコプラズマ肺炎の確定診断は難しく、ほかの臨床症状や検査結果と総合的に判断する必要があります。
*斑状陰影:肺感染症で見られることが多い、辺縁がぼやけた斑点状の影
*浸潤影:肺胞内に液体成分などが入り込むことで生じる、境界の不明瞭な影
2-2.血液検査
血液検査では、白血球数や好中球数が正常か若干上昇している程度です。CRP(C反応性蛋白)値も、通常は正常または軽度に上昇しています。
一般的な炎症反応と考えられ、マイコプラズマ肺炎に特異的な所見ではありません。
2-3.迅速検査
迅速検査は、マイコプラズマ抗原迅速検査キットを用いて、咽頭ぬぐい液から15分程度で抗原を検出することができます。
この検査の感度は60〜90%程度で、特異度は90%以上と高いです。
迅速検査は結果が早く得られるというメリットがありますが、偽陰性の可能性もあるため、臨床症状と合わせて判断する必要があります。
また、抗原が検出できるのは発症後3〜4週間程度と限定されている点も注意が必要です。
当院では、マイコプラズマの迅速検査には対応していません。
3.治療
マイコプラズマ肺炎の治療は、病状に合わせて行う必要があります。適切な抗菌薬の選択と症状の軽減を目指す対症療法が中心です。症状に合わせた治療を行いながら、十分な休息を心がけましょう。
<抗菌薬治療>
マイコプラズマ肺炎に対する第一選択薬としては、マクロライド系抗生物質が使われます。
一般的に用いられるのはクラリスロマイシン(商品名クラリス、クラリシッドなど)やアジスロマイシン(商品名ジスロマックなど)やオゼックスです。
これらの抗生物質は効果が確認されやすく、安全性の高さから広く使用されています。
マクロライド系抗生物質が効かない場合、ニューキノロン系やテトラサイクリン系の抗生物質(例:オゼックス、ミノマイシン)が第二選択薬として用いられますが、ミノマイシンは8歳未満の小児には使用できません。
通常、マクロライド系の投与期間は約5-10日間(アジスロマイシンについては3日間)、テトラサイクリン系は7日から14日間が目安です。
最近ではクラリスロマイシン耐性株が増加しているため、投与後2〜3日で解熱しない場合には他の薬剤への変更が考慮されることもあります。
<対症療法>
マイコプラズマ肺炎は自然治癒する場合もあり、全ての患者さんが抗菌薬治療を必要とするわけではありません。
症状に応じて、解熱剤や去痰剤などの対症療法が行われます。体力の回復を促し、十分な休養と水分補給が必要です。
<その他の注意点>
症状が重症化する可能性もあるため、症状が続く場合は早期に医療機関を受診することが重要です。
また、学校などでの集団発生が起こると、第三種学校伝染病として特別な対応が必要となることがあります。
【参考情報】国立感染症研究所『マイコプラズマ肺炎とは』
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/503-mycoplasma-pneumoniae.html
4. 予防するには?
マイコプラズマ肺炎の予防では、特に飛沫感染と接触感染の防止が重要です。
マイコプラズマ肺炎は主に二つの方法で感染します。
飛沫感染は、感染した方が咳やくしゃみをする際に飛び散る飛沫を他の方が吸い込むことで起こります。
接触感染は、感染者の方と直接触れ合うこと、または感染者が触れた物に触れた後、顔や口を触ることで感染します。
マイコプラズマ肺炎にかかった後でも、完全な免疫ができるわけではありません。一度感染しても、免疫は長く続かず、時間が経つと減少するため、再感染の可能性があります。
マイコプラズマ肺炎を予防するワクチンは開発されていないのが現状です。そのため、以下のような基本的な感染防止策を徹底することが最も効果的です。
・手洗いの徹底
石鹸と水で手をよく洗いましょう。外出先から帰った後や食事前などは特に注意が必要です。
・うがいをする
外出からの帰宅時や食事前にはうがいをすることで、喉の中の病原体を洗い流すことができます。
・マスクの着用
人混みや公共の場ではマスクを着用します。マスクは隙間ができないよう正しく着けましょう。
・患者さんとの接触を控える
感染者の方と直接的な接触を避けることで、感染リスクを低くできます。
・共用物品の消毒
ドアノブやスイッチ、洗面所やお手洗いなど共有の場所や共有物は定期的に消毒することが必要です。
・換気をする
室内の空気を定期的に新鮮なものに入れ替えることで、空気中の病原体の濃度を下げることができます。
特に、学校や職場、家庭などの集団生活の場では、以上のような予防措置を徹底することが必要です。
マイコプラズマ肺炎の感染拡大を効果的に防ぐため、基本的な感染対策を怠らずに、常に注意を払いましょう。
【参照文献】厚生労働省『マイコプラズマ肺炎に関するQ&A 平成23年12月作成、平成24年10月改』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou30/
5.おわりに
マイコプラズマ肺炎は進行が緩やかで初期段階では軽い症状に見えることも多いですが、適切な治療と対策が必要です。
とくに、咳が2週間以上続く場合は、マイコプラズマ肺炎に限らず単なる風邪や一時的な症状ではない可能性があります。
長引く咳はマイコプラズマ肺炎の症状の一つであるため、早めに呼吸器内科を受診することが重要です。早期発見・早期治療によって、症状の悪化を防ぐことができます。
また、マイコプラズマ肺炎は再感染することがあり、現在有効なワクチンは存在しません。そのため、日常生活における予防策が非常に重要です。
手洗い、うがい、マスクの着用、適切な換気を心掛けることで、自分自身だけでなく、周囲の方々を守ることにもつながります。