喘息の子どもがいる家庭必見!エアコン使用時の注意点と対策

エアコンの使い方ひとつで、喘息の症状が良くも悪くもなることをご存知でしょうか。
喘息の子どもを持つ保護者の方に向けて、エアコン使用時に特に気を付けたいポイントをまとめました。
室温の急激な変化(寒暖差)や冷たい空気、室内の乾燥、そしてエアコン内部のホコリやカビといった注意すべき4つのポイントについて、それぞれ丁寧に解説します。
1. エアコン使用時に注意すべき4つのポイント
エアコンが喘息に与える影響には、さまざまなものがあります。
ここでは、その中でも特に注意すべきポイントを4つに分けて整理し、一つひとつ解説していきます。
1-1. 温度差(寒暖差)に注意
まず注意したいのは、室温の温度差(寒暖差)です。
喘息の人は気道に慢性的な炎症が起きており、わずかな温度変化でも敏感に反応して発作につながることがあります。
特に朝晩の冷え込みと日中との気温差が大きい時期(季節の変わり目など)は、寒暖差によって喘息発作が起こりやすくなることが知られています。
エアコンの使用によっても似た現象が起こります。
例えば夏場、冷房で急激に室温を下げたり、冬場に暖房の効いた部屋から急に寒い場所へ移動したりすると、急な温度差により咳込んだり喘息症状が出現するケースがあります。これは急激な温度変化が気道を刺激してしまうためです。
エアコンを使う際は、設定温度を急に下げすぎないようにし、室内外の温度差が極端にならないよう心がけましょう。
どうしても室内外の温度差が生じてしまう場合には、マスクの着用も効果的です。マスクをすることで冷たい空気が直接気管支に入るのを和らげ、吸い込む空気の温度を緩和できます。また、適度に湿度が保たれることで気道への刺激を減らす効果も期待できます。
◆『喘息予防、発作予防にも有効なマスクの選び方と使い方』>>
【参考文献】”Asthma Triggers: Gain Control” by U.S. Environmental Protection Agency (EPA)
https://www.epa.gov/asthma/asthma-triggers-gain-control
1-2. 冷気に注意
エアコンの冷たい風(冷気)そのものも、喘息発作を誘発する要因になります。
冷たい空気を吸い込むと気道が収縮し、刺激となって咳込みやすくなるためです。
実際、喘息の子どもがスーパーマーケットの冷凍食品売り場付近で急に発作を起こすことがありますが、これは冷えた空気を急に吸い込んだことで気道が過敏に反応するためと考えられています。同じように、暑い屋外から強く冷房が効いた室内に入った際にも症状が悪化しやすくなります。
真夏の猛暑日など、「部屋を一気に冷やしたい」とクーラーの温度を低く設定し、強い風量で冷気を出すことがあるかもしれません。
しかし、そうした冷えすぎた空気を直接吸い込むことは危険です。気道を急激に冷やして刺激してしまうため、喘息の発作を誘発しやすくなります。
冷房を使う際は、冷たい風が体に直接当たらないよう工夫しましょう。
風向きを調整して人に直接当たらないようにしたり、風よけのルーバーを使ったりすると効果的です。外出先でも、エアコンの風が強く当たる場所は避ける、冷房が弱めの車両を選ぶ、といった配慮ができると安心です。冷気との上手な付き合い方を心がけ、気道への負担を減らしましょう。
【参考情報】『天気とぜん息の関係を知っておきましょう②』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202207_2/
1-3. 乾燥に注意
エアコン使用時には室内の乾燥にも気を付けましょう。
冷房でも暖房でも、エアコンを使うと空気中の水分が奪われやすく、室内が乾燥しがちです。
乾燥した環境で長時間過ごすと、喉や気管支の粘膜が乾いてしまい、防御機能が低下します。
粘膜がカラカラに乾くと刺激に対する敏感さが増し、わずかなホコリや温度変化でも咳発作につながるリスクが高まってしまうのです。
特に冬場はもともと空気が乾燥しやすく、風邪やインフルエンザなどのウイルスも流行しがちです。
空気が乾燥しがちな冬はとくに注意が必要だと言われています。乾燥しているとウイルスが活発化しやすく、感染症をきっかけに喘息症状が悪化する恐れもあります。
乾燥対策としては、室内の適度な湿度を保つことが重要です。
一般的に湿度は50~60%程度が快適と言われます。必要に応じて加湿器の使用も検討しましょう。
加湿器はスチーム式や気化式など、衛生的に使用しやすいタイプを選びましょうただし、加湿のしすぎにも注意が必要です。
湿度を上げすぎると、今度はダニやカビが繁殖しやすい環境になってしまいます。加湿器を使う場合は適切な湿度設定(50%前後)を心がけ、部屋を締め切りにしないで時々換気するなど、過度な湿気がこもらないようにしてください。
エアコンと加湿器を上手に併用し、乾燥しすぎない快適な室内環境を整えることで、気道の負担を減らし喘息発作の予防につながります。
【参考情報】『日常生活におけるぜん息悪化の要因』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/knowledge/causes.html
【参考文献】”Clinical Guidance for Asthma and Other Respiratory Conditions” by Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
https://www.cdc.gov/asthma/hcp/clinical-guidance/index.html
1-4. アレルゲンの発生と拡散に注意
【エアコン内部のカビ・ダニ】
エアコン内部にはホコリやカビ、ダニなどのアレルゲンが蓄積しやすいことをご存知でしょうか。
エアコンは空気中の塵や湿気を吸い込みながら動作するため、内部はどうしてもホコリや水分が溜まりやすい構造になっています。放っておくとフィルターや熱交換器の裏側にまでカビが繁殖し、その胞子やダニの死骸・フンなどが堆積していきます。
エアコンを稼働させると、内部に溜まったそれらのアレルゲンが風とともに室内に撒き散らされてしまう危険性があります。
喘息持ちの方にとって、カビやダニのアレルゲンは発作の大きな誘因です。「エアコンを入れると咳が出る」という場合、エアコン内部にホコリやカビが繁殖している可能性があります。
【エアコンのメンテナンス】
こうした事態を防ぐために、定期的なエアコンのメンテナンスが欠かせません。
エアコンのフィルター掃除は少なくとも年に2回(冷房・暖房シーズンの前)行い、そのシーズン中も1〜2週間に一度はこまめに掃除するのが理想です。
フィルターや内部に付着したカビの胞子やホコリを取り除くことで、エアコン使用時にそれらが空気中に飛散するのを防ぐことができます。
また、エアコン本体内部(フィルター奥の熱交換器部分)にこびり付いたカビは、専門のクリーニングを依頼しないと除去が難しい場合もあります。シーズンの始めにはエアコン洗浄業者に内部清掃をお願いするのも良いでしょう。
【外出先のエアコンにも注意】
自宅のエアコンだけでなく、外出先のエアコンにも注意が必要です。
例えば、久しく掃除されていないようなエアコンがある場所では、できるだけその風に当たらないようにしたり、マスクを着用して過ごすようにしましょう。
目に見えなくても空気中には様々な微粒子が浮遊していますので、喘息のあるお子さんには空気清浄機の使用も検討すると安心です(ただし空気清浄機もフィルター清掃などのメンテナンスは定期的に行いましょう)。
エアコンを清潔に保ち、室内にアレルゲンを撒き散らさない工夫をすることで、喘息発作の誘因を大きく減らすことができます。
◆『喘息などアレルギー症状を引き起こすカビと、掃除での注意点』>>
【参考情報】『悪化因子の対策 室内環境を見直しましょう』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/indoor.html
【参考情報】『小児喘息治療ガイドライン』日本小児アレルギー学会
https://www.jspaci.jp/assets/documents/childhood-asthma-guideline.pdf
2. 季節別(夏・冬・梅雨)喘息児へのエアコン対策
季節によって、喘息を持つ子どものエアコン使用時に気を付けるポイントは異なります。
夏と冬、そして梅雨それぞれの時期に応じたエアコン対策のポイントを押さえておきましょう。
2-1. 夏場のエアコン対策
夏場はエアコンで室内を快適な温度に保ちますが、冷房の効かせすぎには注意が必要です。
室温は必要以上に低くしすぎず、目安として28℃前後に保つよう心がけましょう。
また、エアコンの冷風が直接お子さんに当たらないよう風向きを調整し、室内の空気を循環させると効果的です。
汗ばんだ状態で急に冷えた室内に入ると症状が悪化しやすいため、入口付近で少し体を冷ましてから部屋に入る、室内でマスクを着用するなど、急激な冷気の刺激を避ける工夫も有効です。
2-2. 冬場のエアコン対策
寒い冬は冷たい空気が気道を刺激して喘息症状を誘発しやすいため、エアコンなどで室温を適度に保ち冷えすぎない環境を整えましょう。
暖房を使うと室内が乾燥しやすいため、加湿器などで湿度を50%前後に維持しましょう。ただし、加湿のしすぎにも注意しましょう(湿度60%を超えるとダニが繁殖しやすくなります)。
適宜換気を行って新鮮な空気を取り入れることも心掛けてください。寒い屋外へ出る際は、マフラーやマスクで口元を覆い、冷たい空気を直接吸い込まないようにしましょう。
【参考情報】『実践しよう!悪化因子への対策』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/kodomonozensoku/taisaku.html
【参考文献】”Clinical Overview: Heat and Children with Asthma” by Centers for Disease Control and Prevention (CDC)
https://www.cdc.gov/heat-health/hcp/clinical-overview/heat-children-asthma.html
2-3. 梅雨時のエアコン対策
梅雨時はエアコンの除湿機能や冷房を活用して室内の湿度を下げ、カビやダニの繁殖を抑えましょう(これらのアレルゲンは喘息を悪化させる要因になります)。
除湿運転時は設定温度を低くしすぎない(冷房時は28℃程度)ようにし、冷たい風を直接吸い込まないよう注意します。
また、定期的に換気を行い、室内にこもった湿気を逃しましょう。
床やカーペットはこまめに掃除し、ダニのエサとなるホコリをためないようにしましょう。
寝具類もダニの温床になりやすいため、晴れ間に天日干ししたり布団乾燥機を使ったりして清潔に保つことが大切です。
エアコン本体も梅雨入り前にフィルターや内部を清掃してから使用すると安心です。
【参考情報】『天気とぜん息の関係を知っておきましょう①』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202207_1/
3. おわりに
喘息の子どもがエアコンを使うときは、室温の急激な変化(寒暖差)に気をつけ、冷たい風が直接当たらないようにし、乾燥を防ぎつつ、カビやホコリが出ないようエアコンを清潔に保つことが大切です。
適切に注意すれば、エアコンで快適さを保ちながら喘息発作を防ぐことにつながります。
ぜひ正しいエアコンの使用方法を心がけて、お子さんの喘息発作を予防しましょう。