赤ちゃんから小児期の心配な咳と注意すること

赤ちゃんや子どもの咳は、単なる風邪が原因であることもありますが、時には重篤な病気の症状の場合もあります。とくに生後6カ月未満の赤ちゃんや小児期の子どもの咳には注意が必要です。

この記事では、赤ちゃんから小児期の子どもの咳の特徴や注意すべき点、受診の目安についてご説明いたします。

1. 注意が必要な赤ちゃんの咳とは?


赤ちゃんが咳をする場合、特に生後6カ月未満の場合には注意が必要です。

生後6カ月未満の赤ちゃんは免疫力がまだ十分に発達していないため、感染症にかかると重症化しやすいといえます。

感染症の中でも特にRSウイルスが原因の場合は、重症化のリスクが高いため注意が必要です。

RSウイルスに感染すると、気管支炎や肺炎を引き起こし、入院が必要になることも少なくありません。

咳が原因で授乳が困難になったり、咳をすると吐いてしまったり、夜も眠れないほどの咳が続く場合は、早急に小児科を受診しましょう。

赤ちゃんは自分の体調を言葉で伝えることができません。少しでも普段と違う様子に気づいたら、迅速に対応することが大切です。

【RSウイルス感染症・・・乳幼児に多い呼吸器の感染症。発熱や鼻水の症状があり、重症化すると酷い咳、呼吸困難などが出現する】

◆『咳を伴うウイルス感染症の種類と具体的な対処法』>>

2.痰がつまりやすいので注意が必要


赤ちゃんは、大人よりも喉や気管に痰がたまりやすい傾向があるため、咳を楽観視せず症状に注意することが必要です。

痰がつまりやすいのは、呼吸器の構造が大人とは異なることが原因です。痰が多く出る場合や、痰が絡んで呼吸が苦しそうな場合は、早めの受診を検討しましょう。

適切な診断と治療を受けるには、受診時に、痰の色や量、状態を医師に伝えることが必要です。痰が出ているときは痰の色や状態をチェックし、保護者の方が把握しておきましょう。

3.注意が必要な小児期の咳とは?


小児期の咳も安易に考えてはいけません。自己判断は避け、きちんとした診察と治療を行うようにしましょう。

学校に通うようになると、集団生活により風邪をはじめとした呼吸器感染症の感染リスクが特に高まります。

乳幼児期には見られなかったリスクにより、アレルギーや環境因子が影響し、小児喘息を引き起こす場合もあります。

咳が2週間以上続いて治らない、夜間に悪化する場合が多い、運動後に咳がひどくなるなどの症状が見られた場合は、早めに呼吸器内科をはじめとした医療機関への受診を検討しましょう。

これらの症状は、小児喘息の可能性も考えられます。早期に診断を受け、適切な治療を開始することが重要です。

◆『小児喘息について』>>

4.小児喘息の治療とは


小児喘息の治療は、主に長期管理薬と発作治療薬の2種類の薬物を用いて行われます。

長期管理薬の中心となるのは吸入ステロイド薬です。

吸入ステロイド薬は気道の炎症を抑える効果が高く、副作用が少ないため、子どもでも安全に使用できます。吸入薬は気道に直接届くため、少ない量で十分な効果が得られるのが特徴です。

一方で、乳幼児や小学校低学年の子どもにとっては、吸入薬を正しく使用するのが難しいという問題があります。

吸入薬をうまく使用できないことが喘息のコントロールを困難にする大きな要因のひとつです。そのため、年齢や発達段階に応じた吸入補助器具を使いましょう。

吸入補助器具には、スペーサーと呼ばれる装置があります。

スペーサーは吸入器と口の間に取り付けるもので、薬剤を一時的に溜めることができます。

これにより、子どもが自分のペースで吸入できるようになり、より多くの薬剤が肺に到達しやすくなります。

発作治療薬として主に使われるのは、β2刺激薬です。β2刺激薬は気管支を拡張させる効果があり、発作時の症状を緩和します。

また、重症度に応じて、ロイコトリエン受容体拮抗薬や長時間作用型β2刺激薬などが追加されることもあります。

難治性の重症喘息の場合は生物学的製剤が考慮されます。生物学的製剤は体内のアレルギー反応を抑制し、喘息症状を改善する効果がありますが、専門医の指導のもとでの使用が必要です。

治療の成功には、お子さん自身や保護者の方の協力が不可欠です。医療チームと連携しながら、適切な自己管理を行うことが重要といえるでしょう。

また、アレルゲンの回避や環境整備など、薬物療法以外の対策も喘息コントロールにおいてとても重要です。

【ロイコトリエン受容体拮抗薬・・・主に喘息やアレルギー性鼻炎の症状を改善するのに使用される薬】
【長時間作用型β2刺激薬・・・気管支を拡張させて喘息やCOPDの症状を改善する薬】

【参照文献】日本アレルギー学会 厚生労働省『アレルギーポータブル』
https://allergyportal.jp/knowledge/childhood-asthma/

【参考情報】Mayo Clinic “Childhood Asthma”
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/childhood-asthma/symptoms-causes/syc-20351507

5.おわりに

赤ちゃんや子どもの咳の原因はさまざまです。風邪やアレルギー、RSウイルス感染症や小児喘息といった重篤な病気まで原因は多岐にわたります。

特に赤ちゃんや幼い子どもは、自分の体調の変化や辛さを言葉でうまく伝えることができません。そのため、周りの大人が日常的に子どもの様子を注意深く観察し、異常をいち早く察知することが重要です。

赤ちゃんや子どもが咳をしているときは、どのような状況で咳が出るのか、咳の頻度や音、その他の症状(発熱、食欲不振、ぐったりしているなど)を観察することが大切です。

これにより、単なる風邪なのか、あるいはもっと深刻な問題が隠れているのかを見極める手助けになります。

また、咳が長期間続く場合や、夜間に特にひどくなる場合、呼吸が苦しそうな場合は、早めに呼吸器内科をはじめとする医療機関を受診することを検討しましょう。

小児喘息の場合、季節の変わり目や天候の変化、特定のアレルゲンに反応しやすいことがあります。

◆『喘息がアレルギーと関わっている?』>>

こうした発作のきっかけを避けるための環境整備も重要です。

例えば、部屋の掃除をこまめに行い、ホコリやカビを取り除くこと、ペットの毛やダニの対策をすることが効果的です。

また、室内の湿度を適切に保つことも発作の予防に有効です。

年齢が大きくなるにつれ子ども自身が病気や咳の管理方法を理解し、自分の体調に敏感になることも大切です。

保護者の方は、医療チームと協力しながら、子どもが安心して成長できる環境を整えるようにしましょう。